「エアコン1台で心地よい家をつくる方法」の読み方

エアコン1台で心地よい家をつくる方法

著者:西郷 徹也(さいごう てつや)

出版社:X-Knowledge(2013年)

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「え?!ホントかよ?」

が入り口の本。築10年の賃貸アパートに住む私が本のタイトルを見た率直な感想。だってそうですよね。14畳程度のLDKを16畳用エアコンで暖めたり冷やしたりしている我が家を想像したら、エアコン1台で家を心地よくするなんて違和感なわけで。その疑問に対する答えが準備されているんだろうと思いながら本を開いた。

各ページにお題があり、お題への回答を文字と絵とグラフでこまめに答えていく構成になっていて、読みやすい。各ページのお題も「そうそう」と共感できたり「そうなの?」と興味をひかれる内容が揃っていて次から次へと読み進むモチベーションが維持できる。本当に読みやすい。イラストもいい感じ。ただ、読み進めるとあることに気づく。答えてない。丁寧に対策方法や考え方を説明してくれているし、参照している情報も正しいし、まとまっている情報も間違っていない。しかし、答えていない。

なんとなく家を建てようかなーと思っている私が、何を求めて本を読んだかといえば、私がどうすべきか?私に何ができるのか?を得ること。各ページのお題に対して「答え」みたいな「結論めいたもの」が提示されていれば、そうかそうなんだと腹に落としながら読めたはず。読了して残ったのは、じゃあ私は何をすればいいのだろうか?という取り残された感。この本を読んで何をすればよいのか、分からなかった。

本自体の読みやすさ、タイトルのキャッチーさから想像するに、対象とする読者は「今から家づくりをしようとしている建築シロート」だと思われる。なるほど内容も思惑から大きくハズレていない印象だ。だが、「今から家づくりをしようとしている建築シロート」が何を求めるかといえば、考えたり判断したりするための材料ではなく、答えだと考えている。なにをしたらいいの?を解消して欲しい。その点で、この本を読むべき人は「建築シロート」ではなく「実際に家を建てる仕事をしているヒトビト」ではないだろうかと思い至る。

似たような本をいくつか読んで感じるのが、住宅の世界には、自称専門家、他称専門家、多少専門家みたいなのが氾濫しているということ。各自手持ちの情報には差があるだろうし、同じ情報に対しての理解度もまちまちだろうと思うが、その中で学ぼうと思い立った人には最適な本。素人向けにこうであると言い切る本ではなく、玄人向けに、こんな情報を元にこう考えるんですよ、を伝える、優れた参考書。