「エアコンのいらない家」の読み方

 

エアコンのいらない家

著者:山田 浩幸(やまだ ひろゆき

出版社:X-Knowledge (2011年)

 -------------------------------------------------

エアコン1台って言ったりエアコンいらないって言ったり、我々消費者はどうすればよいのかわからなくなるタイトル。結局エアコンは要らないのか?!「エアコンのいらない家」と「エアコン1台で心地よい家をつくる方法」が書店で横に並んでる日にはもう。。

装丁は好き。白地に黒文字というシンプルな構成は書店でも目立つ。コレ系の装丁はちらほら目にするが、個人的には好感を持っている。それが、とりあえず手に取ろうと思った理由。ジャケ買いみたいなものか。 この本のタイトルを見て頭に浮かぶのは、「暑い夏をエアコン無しでどうするのよ?!」という疑問。無理ではないか?エアコンがあっても辛い猛暑に、エアコン無しでどう立ち向かっていくのか気になりつつ読み進めた。  

そもそも「エアコンて不快」という感覚がなぜ生まれるか、に踏み込むべき。部屋が乾燥する?なわけない。夏に乾燥させるなんて無理無理。冷たい風が当たるのが嫌?それはエアコンじゃなくて家が悪い。きっちり断熱していれば、強い風を吹き出す必要がないので気流感はかなり無くせる。室内に侵入してくる熱が大きければ、除熱する熱量も大きくなる = エアコンが強風運転、という構図なわけで。

肝心のエアコン無しの方策は「通風」「日射遮蔽」ということらしい。「通風」は、外の風を取り込み、室内も空気温度差による浮力を生かして風を起こし、熱気を排出するという思想と理解した。「日射遮蔽」は、太陽の光をしっかりと遮り、夏季の最大の熱源、太陽光を室内に入れないため、最適な軒の出を確保しよう、ということだった。

「日射遮蔽」は同意する。しかし、「通風」は疑問が残る。 窓の配置や間取りの工夫による重力換気の最大化によって、室内の熱を換気しろという。排熱することについては異論はないが、しかし同時に、夏を少々舐めているのでは無いかとも思う。著書内では、外気温が何度か明示されている部分は非常に少なく、30℃程度、と記述を何度か確認できるが、夏の日本は最大気温が35℃を超える。何が嬉しくて焼け付いた外気を取り込むのだろうか。夜は涼しいという意見もあるかもしれない。しかし、28℃で相対湿度70%を超える外気は、どうやっても涼しくはない。絶対湿度は17g/kgを超え、あきらかにジメジメして寝苦しい。外気は室内空気に比べればマシ、程度だが、その「マシ」であるという意識が、通風へ意識を向かわせるのだろうか。

著書内で、断熱に付いての記述が薄いことも気になる。家の断熱性能において、窓が重要だと説いている点は間違っていないが、屋根壁天井の断熱を疎かにしていいという意味ではない。しかし、著書内では充填断熱と外張り断熱の是非に言及するのみにとどまり、どの程度の性能が必要かという記述は確認できない。

夏の暑さに対抗するためには、日射遮蔽と断熱・気密で外からの日射熱を遮り、室内にたまった熱は通風で排熱した後に、機械的な操作で冷やすことが大切。機械的な操作を否定した本著では室温を外気以下に下げる方法が無いため、どんなに頑張っても外気温+2℃の室温。暑い。ヒトも家電も熱を出すから。

エアコンの使用は必須だけれど、エアコンの稼働時間を極力短くするための工夫集としてなら読む若干価値あり。断熱の考え方が古いのと、風通せば快適と言いたげな思想は同意できない。内容はアレだけど書籍としては読みやすくて良いと思った。